LT・ゾーン計算ツールの使い方と計算の根拠
NduroLab|持久系スポーツ研究所の無料ツールです。ランニングの「閾値(LT)」と練習ゾーンを、3つの入り口から計算できます。
登録は不要です。計算はブラウザの中だけで行い、入力した値は送信も保存もしません。
できること
| 入り口 | 入れるもの | わかること |
|---|---|---|
| レースの記録から | 距離とタイム | VDOT、練習の目安ペース(E・M・T・I・R)、同じ力での予想タイム |
| 30分TTから | 30分の単独走の平均ペースと、最後の20分の平均心拍 | 閾値ペース、閾値心拍(LTHR)、心拍ゾーンとペースゾーン |
| 乳酸の測定値から | 強度(km/h・分/km・W)と血中乳酸(mmol/L)の組 | Dmax・ModDmax の閾値、参考の 4 mmol/L、乳酸カーブのグラフ |
表示の単位は、ペースが「分:秒/km」、心拍が bpm、乳酸が mmol/L です。
使い方
1. レースの記録から
- 距離を選び(ほかの距離は「その他」で km を入力)、タイムを「19:57」や「1:31:35」の形で入れます
- 「計算する」を押すと、VDOT と5種類の練習ペースが出ます
使うのは、最近(目安として数か月以内)に全力で走った記録です。坂の多いコースや暑い日の記録だと、実力より低めに出ます。
2. 30分TTから
- よくウォーミングアップしてから、ひとりで30分間、保てるいちばん速いペースでなるべく一定に走ります(レースや仲間と一緒に走ると高めに出やすいため、ひとりで行います)
- 走り始めて10分たったところで、時計のラップを押します
- 30分全体の平均ペースと、最後の20分の平均心拍を入れます
3. 乳酸の測定値から
- 強度の単位(速度・ペース・パワー)を選びます
- 段階ごとの強度と乳酸の値を表に入れます。行は「行を追加」と「×」で増減できます。表計算ソフトやCSVからの貼り付けもできます(1行に「強度, 乳酸, 心拍」)
- 心拍は任意です。入れると、閾値の位置の心拍を前後の測定点から補って出します
- 点は4つ以上が必要です。曲線が測定のばらつきに引っぱられないよう、5〜8点以上をおすすめします
計算の根拠
VDOT(Daniels と Gilbert の式)
レースの速度 v(m/分)と時間 t(分)から、次の2つの式で VDOT を出します。
- その速度で走るのに必要な酸素の量:VO2 = −4.60 + 0.182258·v + 0.000104·v²
- t 分間続けられる、最大酸素摂取量に対する割合:%max = 0.8 + 0.1894393·e^(−0.012778·t) + 0.2989558·e^(−0.1932605·t)
- VDOT = VO2 ÷ %max
練習ペースは、VDOT にそれぞれの割合をかけた酸素の量から、速度に戻して出します(逆の式:v = 29.54 + 5.000663·VO2 − 0.007546·VO2²)。
| 種類 | このツールの取り方 | Daniels が示す範囲 |
|---|---|---|
| E イージー | 59〜74%(目安として70%も表示) | VO2max の 59〜74% |
| M マラソン | 同じ VDOT のフルマラソン予想ペース | 75〜84% |
| T 閾値 | 88% | 83〜88% |
| I インターバル | 97.5% | 95〜100% |
| R レペティション | I より 400m あたり6秒速い | 100% を超える速さ |
範囲の中のどこを取るかは、Daniels が公開した VDOT 表と照らして決めました。たとえば VDOT 50 では、表の値とこのツールの値は次のとおりです。
| 表の値 | このツール | |
|---|---|---|
| E/L | 5:07/km | 5:07/km |
| M | 7:17/マイル(約4:32/km) | 4:31/km |
| T | 4:15/km | 4:15/km |
| I | 3:55/km・400m 93秒 | 3:55/km・400m 94秒 |
| R | 400m 87秒 | 400m 88秒 |
このサイトのテストでは、VDOT 30・40・45・50・55・60・70 の表のレース記録から出した VDOT が表の値と ±0.3 以内、VDOT 40・50・60 の練習ペースが1kmあたり ±2秒以内(400mあたり ±1.5秒以内)、予想タイムが ±0.5% 以内に収まることを確かめています。
30分TTとゾーン(Joe Friel)
テストの手順とゾーンの割合は、Joe Friel が TrainingPeaks に書いた記事の値です。
| ゾーン | 心拍(LTHR に対する%) | ペース(閾値ペースに対する%) |
|---|---|---|
| 1 | 85%未満 | 129%より遅い |
| 2 | 85〜89% | 114〜129% |
| 3 | 90〜94% | 106〜113% |
| 4 | 95〜99% | 99〜105% |
| 5a | 100〜102% | 97〜100% |
| 5b | 103〜106% | 90〜96% |
| 5c | 106%超 | 90%より速い |
- ペースの%は「1kmにかかる時間」での割合です。数字が大きいほど遅くなります
- 心拍の bpm は、各ゾーンの下限の%に LTHR をかけて切り上げ、上限は次のゾーンの下限の1つ手前にしています(例:LTHR 170 bpm なら、ゾーン2は 145〜152 bpm、ゾーン5aは 170〜175 bpm)
- ペースの境目は記事の%をそのまま計算しています。記事の値どおり、ゾーン4と5aは少し重なり、整数の%の間に小さなすき間があります
- 記事にはバイク(自転車)の心拍ゾーンもありますが、ランニングとは数字が違うため、このツールはランニングの値だけを使っています
乳酸カーブ(Dmax・ModDmax・4 mmol/L)
- 近似曲線:測定点に3次の多項式を最小二乗法で当てはめます(ライブラリを使わず、ページの中で計算)
- Dmax(Cheng ほか, 1992):近似曲線の最初と最後の点を結ぶ直線から、いちばん遠い曲線上の点です
- ModDmax(修正 Dmax。Bishop ほか, 1998):乳酸が前の段階より 0.4 mmol/L を超えて初めて上がった段階の、1つ前の測定点と、最後の測定点を結ぶ直線から、いちばん遠い曲線上の点です
- 4 mmol/L(参考。Heck ほか, 1985。OBLA とも呼ばれる):近似曲線が 4.0 mmol/L に届く強度です。人によって閾値の乳酸の値は違うため、参考として出しています
いちばん遠い点は「曲線の傾き=直線の傾き」になる点として、2次方程式を解いて求めています。ペースで入力した場合も、曲線は速度(km/h)に直してから当てはめます。Dmax の直線の両端は、Cheng らの説明(曲線の両端)に合わせて近似曲線上の点にしています。測定点そのものを使うソフトもあり、当てはまりが悪いときは結果が少し変わります。
このサイトのテストでは、ちょうど3次式に乗るように作ったデータで、Dmax と ModDmax が手計算の位置(例:Dmax は 8 + 10/√3 ≒ 13.77 km/h)と一致することを確かめています。
注意
- 結果は式にもとづく推定で、医療機器や診断ではありません。体調に不安があるときは、運動の前に医師に相談してください
- VDOT の練習ペースは、その距離に合った練習をしてきた人のレース記録を前提にした目安です。初めての距離や、久しぶりの全力走では、ずれが大きくなります
- 30分TTは、全力で一定に走れたかどうかで結果が変わります。手首で測る心拍は、胸のベルトより誤差が出やすいことがあります
- 乳酸の値は、段階の長さ、採血の場所、測定器によって変わります。前回と比べるときは、同じ手順で測った値どうしで比べてください
- Dmax・ModDmax・4 mmol/L は、同じデータでも違う強度を指します。どれが正しいというより、同じ方法で続けて見ることが大切です
出典
- Daniels J, Gilbert J. Oxygen Power: Performance Tables for Distance Runners. 1979.(VDOT の2つの式)
- Daniels J. Daniels' Running Formula. Human Kinetics.(E・M・T・I・R の強度の範囲)
- Daniels J. Running Training: Determining your current level of fitness. CoachesEducation.com, 2000.(照らし合わせに使った VDOT 表) https://coacheseducation.com/endur/jack-daniels-nov-00.php
- Friel J. Joe Friel's Quick Guide to Setting Zones. TrainingPeaks, 2012(2026年更新).(30分テストの手順、ランニングの心拍・ペースゾーン) https://www.trainingpeaks.com/learn/articles/joe-friel-s-quick-guide-to-setting-zones/
- Cheng B, Kuipers H, Snyder AC, Keizer HA, Jeukendrup A, Hesselink M. A new approach for the determination of ventilatory and lactate thresholds. Int J Sports Med. 1992;13(7):518–522. doi:10.1055/s-2007-1021309
- Bishop D, Jenkins DG, Mackinnon LT. The relationship between plasma lactate parameters, Wpeak and 1-h cycling performance in women. Med Sci Sports Exerc. 1998;30(8):1270–1275. doi:10.1097/00005768-199808000-00014
- Heck H, Mader A, Hess G, Mücke S, Müller R, Hollmann W. Justification of the 4-mmol/l lactate threshold. Int J Sports Med. 1985;6(3):117–130. doi:10.1055/s-2008-1025824
- Sjödin B, Jacobs I. Onset of blood lactate accumulation and marathon running performance. Int J Sports Med. 1981;2(1):23–26. doi:10.1055/s-2008-1034579
- 実装の照らし合わせ:Maturana FM. lactater: Tools for Analyzing Lactate Thresholds(R パッケージ, CRAN)
確認日:2026-11-02